臨床発達心理実践研究2025 第20巻 第2号 83-95
自閉スペクトラム症児に対する保護者支援と並行したコミュニケーション指導
山﨑 智仁 水内 豊和
山口県立大学 島根県立大学
特別支援学校において,見通しがもてなかったり,自分の気持ちが通らなかったりすると不適切行動を起こす自閉スペクトラム症児に対し,見通しをもち,適切に余暇の要求ができるよう支援を行った。並行して,保護者には対象者との関わり方を具体的に伝え,相談に応じることで家庭支援を実施した。対象者は要求行動を身につけ,見通しをもてるようになり,不適切行動が減少した。また,母親が困った際に相談できる環境を整えたことで,自信を持って対象者の支援を行う姿が見られるようになった。対象者と父親との活動を提案した結果,父親との関係が改善され,母親のストレス軽減に繋がった。
【キー・ワード】自閉スペクトラム症,障害,コミュニケーション,保護者支援
臨床発達心理実践研究2025 第20巻 第2号 96-106
青年期に自閉スペクトラム症と診断された青年の個人的アイデンティティ構築プロセス
――認知行動療法による介入を通して
本郷 美奈子
千葉大学医学部附属病院
社交不安障害と診断されたのち,自閉スペクトラム症と再診断された青年A(以下,Aと表記)に認知行動療法を実施した。本研究は,この介入を通してA の個人的アイデンティティがどのように構築されたかを明らかにすることを目的とする。自閉スペクトラム症と診断・告知を受けたAは,自身の特性を理解し,具体的な対処を模索する中で,自己認識を深めることができた。このプロセスを通じて,自己コントロール感や他者とのつながり,過去との連続性といった感覚を獲得し,結果として肯定的な個人的アイデンティティを築き,不安の軽減に至った。以上のことから,認知行動療法は,自閉スペクトラム症をもつ人のアイデンティティ構築に貢献する可能性が示唆された。
【キー・ワード】自閉スペクトラム症,青年期,アイデンティティ,認知行動療法,精神的健康
臨床発達心理実践研究2025 第20巻 第2号 107-115
重度重複障害児の「特定の行動」に着目したコミュニケーション指導について
――肢体不自由特別支援学校の中での取り組み
川上 雪子 東 敦子
東京都立永福学園 国際学院埼玉短期大学
本研究は,重度重複障害児のコミュニケーション手段獲得の困難さを問題点とし,肢体不自由特別支援学校での指導実践でその糸口をつかむことを目的とした。学校生活で繰り返される場面の観察で,好む活動が中断される際の行動に着目し,活動再開の要求という意図的コミュニケーションにつなげる指導実践を行った。結果,中断中の未分化な四肢の動きの中から,対象物を指先で触るという「特定の行動」を同定し,さらに応答性を高めることにより目的的な行動を定着させることができた。先行文献の知見による考察を通し,「特定の行動」への応答性を高めることが重度重複障害児の対人意識を強め,意図的コミュニケーションにつながる可能性が示された。
【キー・ワード】肢体不自由,重度重複障害児,特定の行動,コミュニケーション指導,特別支援学校
臨床発達心理実践研究2025 第20巻 第2号 116-124
インターネット依存傾向と生活の諸側面の関係に関する研究
――高校生対象の生活実態調査の結果をもとに
小谷 正登 岩崎 久志 三宅 靖子 木田 重果
関西学院大学 流通科学大学 姫路獨協大学 西宮市教育委員会
来栖 清美 塩山 利枝 下村 明子
NPO法人 kokoima 芦屋市教育委員会 宝塚医療大学
本研究では,高校生を対象とした生活実態調査の結果を分析・考察し,インターネット依存傾向と心身の状態を含めた生活の諸側面との関係を検討したところ,以下の2点が明らかになった。(1)インターネット依存傾向の高さが,睡眠・食事・放課後の過ごし方,学校生活,情緒・感情・身体的側面,家族・他者との関係などの生活の諸側面と関連する。(2)インターネット依存傾向が低い高校生ほど,メディアの利用時間が短く,就寝・起床時刻が早く,睡眠・食事の状態,学校生活,情緒・感情・身体的側面の状態,家族・他者との関係が良好で,自尊感情が高かった。以上から,「依存傾向が低いことと生活の諸側面の好ましい状態が関連する」との仮説が支持された。
【キー・ワード】インターネット依存傾向,生活の諸側面,高校生,心身の健康状態
臨床発達心理実践研究2025 第20巻 第2号 125-132
発達性読み書き障害のある中学生に対する心理教育的アセスメント結果のフィードバック
――主訴に対する学習方略を試す支援と組み合わせて
岡村 恵里子 岡崎 慎治 大六 一志
東北文教大学 筑波大学 NPO法人LD・Dyslexiaセンター
発達性読み書き障害のある中学生2名を対象に,WISC- ⅣおよびDN-CASの検査結果のフィードバック(FB)と,主訴に対応した方略支援を組み合わせた実践事例を報告した。本支援により,対象者および保護者はFBに対して高い満足度を示した。また,対象者における主観的な自己理解や対処方略への意識が高まったことも示唆された。一方で,十分な練習時間が確保できなかったことから,方略による学習パフォーマンスへの明確な効果が表れにくく,主観的な困難さの軽減には至らなかった。今後の実践への示唆として,本FB支援の枠組みを継続的な学びの場に応用する可能性と,その際に留意すべき実践上の課題について検討した。
【キー・ワード】心理教育的アセスメント,フィードバック,学習方略,中学生,発達性読み書き障害
