臨床発達心理実践研究2024 第19巻 第2号 39-50

知的障害児の性的行動問題の改善
――業務用車両を見るとマスターベーションを始めてしまう生徒への指導

原田 崇
宮崎県立延岡しろやま支援学校

性的行動に問題がある対象生徒A(以下Aと表記)に,対話型振り返りスクリプトを考案し,対話を通しての指導を実施した。実施に当たっては,Aが自身の生活文脈から「恥ずかしい文脈」と「かっこいい文脈」に注目できるように,「取り扱うテーマ」「Aの生活文脈を活用したストーリー」「支援者の語りかけ」の3つのポイントを考慮した。この指導により,Aの羞恥心や誇りといった情動とそれを意味する「はずかしい」「かっこいい」といったことばにAが関心を示すようになった。また,獲得したそれらのことばを手がかりに,Aは自身の性的行動上の問題を自発的に改善する姿を見せる
ようになった。

【キー・ワード】知的障害,性的行動問題,スクリプト,自己評価的情動


臨床発達心理実践研究2024 第19巻 第2号 51-57

乳幼児健康診査におけるスクリーニング
――群馬県におけるSocial Attention and Communication Surveillance-Japan(SACS-J)の活用

奥野 みどり 増田 さゆり
群馬パース大学 桐生大学

群馬県内の乳幼児健康診査での SACS-J(Social Attention and Communication Surveillance-Japan)の普及と活用を目指して,県,市町村保健師らと協働した取り組みを行った。SACS-Jは豪ヴィクトリア州でのASD を早期に発見するための試み(SACS)を改変したものである。取り組みから,一次スクリーニングツールとしての有効性と,SACS-Jの普及に向けた研修会や見学会等の実施を経て,改定版SACS-J標準実施マニュアル(1歳6か月児,2歳児/ 2歳6か月児,3歳児)と動画を制作した。2022年度末の県内のSACS-J導入市町村は,1歳6か月児健診で 24か所(68.6%)となった。今後は,マニュアルの持続的な活用を図り,継続した SACS-Jの実施とデータ分析等の精度管理が求められる。

【キー・ワード】 乳幼児健康診査,発達障害,自閉スペクトラム症,早期発見,スクリーニングツール,
       SACS-J