「一般社団法人日本臨床発達心理士会」への移行に関するQ&A (2023.2.9)
Q:日本臨床発達心理士会が、臨床発達心理士認定運営機構から別れて別の一般社団法人となるのはなぜですか。
A:端的に言うと、性格の違う組織が一つの法人になっていたのを適切な状態にすると言うことになります。
臨床発達心理士認定運営機構は、「臨床発達心理士」という資格を認定する機関です。一方、日本臨床発達心理士会とは、「機構」によって認定された「有資格者」の団体です。「資格認定をされた者」が「資格認定をする組織」の内部にいると言うことは、適切な関係ではありません。そこで、今回別の法人にすることにしたわけです。
また、士会が「一般社団法人」となることは、「法人格を持つ」、すなわち他団体や個人と正式に「契約」が結べるということです。「士会」が、責任を持って約束し実行する主体となると言うことを意味します。
Q:唐突に新法人になるという話ができたように思いますが、どのような経緯で新法人になったのでしょうか?説明が不十分に思います。
A:すべての会員に情報が行き渡っておらず「説明が不十分」と感じられた方があることについては、反省したいと思います。ただ、拙速に事を進めているわけではありません。前項に書いたように、元々違う性格の団体が一つになっていたため、いろいろな困難が生じていました。そのためずいぶん前から士会の法人化の話題は幹事会や士会と機構の調整会議などでも出ていました。それがきちんとした形をとるようになったのは2018年からです。
2018年5月19日の幹事会で、法人化について検討するワーキンググループが作られました。そして、2019年12月7日の「将来構想委員会」の中で、法人化に向けて具体的に準備を始めることが決定され、そこから定款その他の基本文書の起草が始まっています。2020年9月13日の幹事会で法人化をすることが議論され、その後支部長会議をへて全会員へのアピール、パブリックコメントの募集などが行われました。それらの意見を踏まえ、案を練り直すと共に機構理事会とも何度も調整が行われました。機構理事会内にも士会法人化に関わる検討会議が設けられました。
2022年8月7日に臨時幹事会・支部会長会議が開催され、支部を通じて法人化への意向が確認され、9月23日の幹事会において法人設立準備委員会が立ち上がり、具体的に法人化への手続きに入りました。全国大会にて幹事長が新法人の構想を説明し手続きについても動画にて説明しました。11月18日には法人の登記が完了しました。
法人設立準備委員会の動きはメルマガで逐次お伝えするとともに、新法人に関する情報は、新法人のHP(https://jacdp.jp)やSNSにてお知らせしています。今後とも、会員が必要な情報にアクセスできるよう、広報に努めていきたいと考えています。
Q:機構と士会の関係はどうなるのですか?
A:機構と士会の関係は、全く変化しません。もともと別の性格の組織であり、機構は資格を認定するところ、士会は臨床発達心理士の団体です。「臨床発達心理士」資格の認定、更新等は機構の業務です。
これまで同一法人の中にありましたので、会員の方には二つの組織の違いがあまり明確に意識されていませんでしたが、例えば、費用は明確に区別してきました。資格認定料や更新料、また、資格申請に当たっての「指定科目講習受講料」「資格申請料」等はすべて機構の収入であり、一方、士会会費はすべて「士会の収入」として、厳密に区別しています。送付物も、機構関係、例えば更新手続きの書類はピンク色、士会関係、例えばニューズレターや「実践研究」誌、全国大会のお知らせなどは水色封筒と区別してきました。
ただ、法人としては一つなので、講師謝金等に関わっての「支払い調書」は士会の分も含めて機構が「ピンク色」の封筒で送っています。
とはいうものの、通常の活動はすべて分けて行われてきました。今回、法人が二つになるだけで、その「二つの組織」という関係は変わりません。研修会に関しては、別法人と言うことで、研修会についてのポイント申請を士会から機構にしなければなりませんが、それは双方の事務局同士で行いますので、一般会員の方にはほとんど影響はないものです。
Q:会費を機構と士会の両方に払わなければならないのですか?
A:会費は士会に払って頂ければ結構です。機構に支払うのは、更新の時の更新料だけです。現状では、従来と全く変わりません。
Q:更新手続きはどうなるのですか?
A:これも全く変わりません。更新時は機構から更新の案内が来ます。それに従って機構に更新手続きをしてくだされば結構です。ポイントも、機構のSOLTIシステムから各自確認できます。士会の研修会は機構に対してポイント申請を行います。ポイントが認められた研修会であれば、そこに適切に参加することでポイントが付与されます。
Q:新しい士会に加入しなければ臨床発達心理士資格が維持できないのですか?
A:資格は機構が出しています。一般社団法人日本臨床発達心理士会の会員であるかどうかは、資格とは無関係です。機構の基準にあっておれば資格更新もできます。ただ、その更新ポイントを取得できる研修会を士会はたくさん実施します。2023年度も70回程度が予定されています。士会が開催する研修会に非会員の方も参加できる場合もありますが、士会の会員か非会員かで、参加費に差をつけます。その差額は、5年間で12ポイント取得するためには会員になったほうが有利であるという程度の額を設定します。機構の研修会や関連団体が開催する研修会にてもポイントが取得できますが、士会に登録して頂いた方が「お得」であると言えます。
なお、新法人の加入が任意なのは、「ある資格を持つものを強制的にある団体に加入させること」が、弁護士会等法的に認められたもの以外は許されていないからです。今回、その法の定めに則ったというわけです。
Q:一般社団法人となると、士会の活動はどう変わるのですか?
A:まず、「法人格」を持つと言うことは、他団体や個人と責任を持った契約ができる、つまり責任を持って約束をし、それを実行できると言うことです。士会は従来からJDDネットやスクールカウンセリング協議会、その他、様々な団体と連携してきました。また、最高裁判所はじめいろいろな機関とも協力してきました。しかし、今後は、その連携・協力に関わっての判断や実行が、士会自身の決定で行えると言うことです。つまり、社会的な信用が高まり、また、物事の決定や実行がより迅速にできるようになると言うことです。加えて、より様々な団体や個人と協力関係を結んでいけると言うことでもあります。
士会の意思決定のプロセスも変わります。独立した法人ですから、自身で対外的な意思決定ができます。
内部としても、「一般社団法人」という組織形態は、一人一人の会員の意思を尊重する仕組みを待つことになります。本来はすべての会員が社員であるべきですが、何千人もの会員が一堂に集まって社員総会を行うことは現実的ではありません。ですから、会員が直接集まる支部総会において、支部会員の代表として「代議員」を選出して頂き、その代議員を法人法上の社員と定め、重要なこと(理事・監事の選任や会計計算書類の承認、定款の改定等)は社員総会で行う、社員総会で選任された理事がその付託の上に立って日々の業務執行を行う、という体制をとります。つまり、一人一人の会員を主体として、民主的運営を行うこととします。
また、職能団体として、一人一人の会員の「臨床発達心理的支援業務」をサポートすることにも力を注ぎます。例えば「いじめ重大事案における第三者委員会への委員の推薦」や「一方的に心理職から事務職に身分を変更されようとした方への、職場への申し入れ等の具体的な支援」など、従来しようとしてできなかった活動も行うことが可能になります。
Q:会費や研修会参加費が高いのではないですか?
A:会費や研修会参加費については、もっと安くできないか、検討をしているところです。準備の中でも減額する案は出されましたが、会員数がどうなるのか不明確なままで額を決定しなければならなかったので、現時点では従来通りとなりました。今後、会員数、あるいは運営上の工夫等で、安くできないかを引き続き検討していきます。本会のような団体では、その年度に会員から頂いた会費はその年度中に会員のために使い切るのが原則です。従って、赤字では困りますが、あまり多額の黒字を残すことはふさわしくありません。通常一般社団法人として「剰余金」として持てるのは、せいぜい「何か不測の事態が生じて収入が途絶えても1年程度は会の運営が継続できる程度の金額」と言われております。そういう原則に基づいて収支のバランスをとりながら、適正な会費や研修会参加費を検討していきます。
また、会費は会の運営のために使わせて頂きます。会員、特に役員が手弁当で自分の時間を割いて活動しなければならないという状況では、今後の発展は困難だと考えています。ですから、心理士は心理学や発達心理的支援に関わることに注力し、それ以外のことはできるだけ業者に委託することとします。そのためには費用が必要ですが、それで役員の負担を減らし、様々な方に役員になって頂き、会の継続的な運営を確実なものにしていきたいと思います。同じ人が長い期間役員を続けることは、いろいろな意味で弊害を生むと考えています。
なお、研修会参加費についてですが、「会費の中に研修会の費用がすべて含まれている」と解釈されると「会費」が「会の運営のための費用」でなく「個人の利益の対価を含む」と見なされる可能性を残しますので、「会費のみですべての研修会経費をまかなう」という立場はとりません。